2009/10/18

ドイツの秋、別の視点から

JTP あなたにとってドイツ赤軍とは、なによりも女性の行動ですね。
GR そのとおりです。そこでは、女性たちが重要な役割を果たしたとも考えていますし、彼女たちは、男たちよりもずっと強い印象をわたしに与えました。
〔…〕
JTP テロによる犠牲者も描こうと思ったことがありますか。たとえば、ハンス=マルティン・シュライアーを。
GR 一度もありません。
〔…〕
JTP そうすると、ドイツ赤軍の死者たちは、彼らのイデオロギーの犠牲者ということになるでしょうか?
GR もちろんそうです。でもある特定の、左や右のイデオロギーの犠牲者というのではなく、イデオロギー的な態度全般の犠牲者です。むしろ、つねになくならない、人間的ジレンマと関連しています。非常に一般的にいえば、革命と挫折です。
JTP 特記すべきことに、アヴァンギャルドという概念は芸術だけでなく政治にも関わっています。芸術と革命的な反抗の間には、なにか関係があるのでしょうか? ドイツ赤軍のなにが、あなたのような成功したブルジョア芸術家の興味をひくのでしょうか? 彼らの行為ではないでしょう?
GR いえ、行為ですとも。なぜなら、そこではだれかが根本からなにかを変革しようとしており、そのなにかを人はよく理解できるのみならず、メダルの裏側ともみなせるからです。芸術もまた革新的といわれたことがありましたが……芸術は事実として革新的なのではなく、まさに芸の術として、まったくべつのやり方でそうなのです。
JTP 絵画とは現実批判であり、なにかまったく新しいものを生みだそうとする試みでしょうか?
GR なんにせよ芸術は……反世界です。なにかべつのことの計画であり、モデル、あるいは報道です。

「ヤン・トルン・プリッカーとの対談 連作《1977年10月18日》をめぐって 1989年」(ゲルハルト・リヒター『写真論/絵画論』清水穣訳、淡交社、所収)

このインタヴューからも、すでに20年が経過している。

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