2009/10/01

マルコム・グラッドウェル『天才!──成功する人々の法則』

マルコム・グラッドウェル『天才!──成功する人々の法則』(勝間和代訳、講談社)
成功とは、社会学者が好んで呼ぶ「累積するアドバンテージ」の結果である。プロのアイスホッケー選手は最初、同じ年齢の仲間よりほんのちょっとだけホッケーが上手だった。そして小さな差が好機を招き、その差が少し広がる。さらに、その有利な立場が次の好機を招く。こうして、最初の小さな差がますます大きくなり、延々と広がって、少年は本物のアウトライアーになる。だが、この少年はもともとアウトライアーだったわけではない。ほんのちょっとホッケーがうまかっただけだ。p.37

ここで注目すべきなのは、エリクソンが“生まれつきの天才”を見つけられなかったことだ。仲間が黙々と練習に励む、その何分の一かの時間で、楽々とトップの座を楽しむような音楽家はいなかった。その反対に、他の誰よりも練習するが、トップランクに入る力がないタイプである“ガリ勉屋”も見つからなかった。調査は、一流の音楽学校に入る実力を持つ学生がトップになれるかなれないかを分けるのは、「熱心に努力するか」どうかによることを示していた。彼らを分けるのは、ただそれだけ。さらに重要なことに、頂点に立つ人物は他の人より少しか、ときどき熱心に取り組んできたのではない。圧倒的にたくさんの努力を重ねている。
複雑な仕事をうまくこなすためには最低限の練習量が必要だという考えは、専門家の調査に繰り返し現れる。それどころか専門家たちは、世界に通用する人間に共通する“魔法の数字(マジック・ナンバー)”があるという意見で一致している。つまり一万時間である。p.46

あなたがどこで育ち、あなたの両親がどこで育ったかだけでなく、あなたの曾祖父母や高祖父母、さらにはそれ以前の世代が育った場所にまで遡る必要がある。その事実は、意外な形で表れ、あなた自身の人生や考え方に強い影響を及ぼしている。
だが、それは始まりに過ぎない。なぜなら、詳しく調べれば調べるほど、そのような“文化という名の遺産”はますます奇妙で、さらに強い影響を及ぼすものだからだ。p.192

ホフステッドは有名な自著『Culture's Consequences(文化の影響)』で書いている。
“権力格差の小さい国”では権力者は権力の行使を恥ずかしく思い、控えめに演じようとするものだ。私はかつて、あるスウェーデン人(権力格差が小さい)の大学職員が、権力を行使するために、自分には権力がないように見せかける、と話すのを聞いたことがある。指導者は公的な象徴を放棄することによって、非公式な地位を高めるのかもしれない。オーストリア(権力格差が小さい)のブルーノ・クライスキー首相は、たまに市街電車で出勤することで有名だ。1974年、私はオランダ(権力格差が小さい)のデンオイル首相が、ポルトガルのキャンプ場で自分のキャンピングハウスで休暇を取っている姿を見かけた。権力者のそのような姿は、権力格差の大きなベルギーやフランスではとてもお目にかかれないだろう。p.233

以下は灼熱の太陽のもと、湿気の高い中国の水田で、1年に3000時間働く貧しい農民が昔から互いに交わし合ってきた至言である。(…)
もっとも印象的なのはこれだ。
「1年360日、夜明け前に起きた者で、家族を豊かにできなかった者はいない」
p.269

私たちは往々にして、「数学が得意なこと」を生まれつきの才能だとみなす。“その能力”があるかないか。だがショーンフェルドにとって、数学は能力ではなく態度である。試みることを厭わなければ、数学が得意になる。ショーンフェルドはまさに、そのことを学生に教えようとしている。成功とは、粘り強さ、辛抱強さ、勤勉を厭わない意思の結果であり、それらがあれば、たいていの人が30秒で投げ出すことに22分もかけて取り組める。p.279

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