2009/09/28

堀尾真紀子『フリーダ・カーロ──引き裂かれた自画像』(中公文庫)

堀尾真紀子『フリーダ・カーロ──引き裂かれた自画像』(中公文庫)
その得体の知れない深さが、何かを発芽させる可能性を孕んで、ブルトンだけでなく多くの外国人、特に芸術家を惹き寄せ魅了している。彼らはそれぞれの目で、この国の不可思議さを把えようと試みた。アメリカの作家ジョン・リードは、メキシコ革命を題材として『反乱するメキシコ』を著わした。有名なロシア革命の彼のルポ『世界をゆるがせた十日間』に先立つこと六年前のことである。同じくメキシコ革命を、『戦艦ポチョムキン』で有名なロシアのセルゲイ・エイゼンシュタインは、さまざまな障害で完全な形には至らなかったものの、映画『メキシコ万歳!』に残した。イギリスのD・H・ロレンスは『翼ある蛇』を、同じくイギリス人サマセット・モームは『疵のある男』などを書いている。その他にも多くの作家、芸術家が、自国にはないこの国のもつ魔力と霊感を求めて、磁石に吸い寄せられるようにメキシコに集っている。そしてその大きな渦の中心にはいつもディエゴ・リベラとフリーダ・カーロがいた。p.138

救いの手を差しのべてくれたのは、マルセル・デュシャンとその恋人だった。フリーダは彼らの家に落ち着いた。そして彼らはフリーダの絵を税関から引きとってくれ、画廊も捜してくれた。フリーダは手紙の中で、デュシャンの恋人はとてもよい人だ、ブルトンやその取り巻きの薄汚ない連中とは大違いだと言っている。デュシャンの恋人はアメリカ人であった。英語の堪能なフリーダは、ようやく本来の彼女になり得たのだ。p.146
※上の点、デュシャン側からの証言はあるのだろうかとカルヴィン・トムキンズ『マルセル・デュシャン』(みすず書房)を確認してみたが、特に記されていなかった。いや、もっと正直に言おう。あわよくば、デュシャンとフリーダ・カーロはやっちゃった可能性があるのかな、という下司の勘ぐりをしたのだった。

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