2009/09/03

三木成夫『内臓のはたらきと子どものこころ』

三木成夫『内臓のはたらきと子どものこころ 増補新装版』築地書館
子どもが生まれる方に読んでもらいたい名著。すべて重要だが、とりあえず気になったところだけ抜き出す。
まあ以上のようなわけで、この内臓の中でいったいどういうことが行われているか、これが素直に、大脳皮質の表面に、スーッと出てくるということは、めったにないと考えていいのです。たまたま見られるのが、あの健康な空腹感といったところでしょうか……。p.23

これまでの実地調査から見ますと、三十億年の昔、原始の海面に小さな生命のタマができたときもうその中には、地球を構成するすべての元素が入っていたという……。げんにこのからだには、鉛も入っているし、砒素も入っているし、六価クロムも入っております。猛毒の元素がきわめて微量に入っております。それはちょうど、地球というモチをちぎったようなものですから、ひとつの星──“生きた地球の衛星”ということになりますね……。ただ、それがあまりに小さい。しかも海水の表面張力が強すぎるので宇宙空間に出ることができない。ですから、星のまま漂っている。そういうものが一緒に集まってできた多細胞は、まさにあの「大宇宙」に対する「小宇宙」ということになるわけですね……。p.79

たとえば、皆さん、ボールが飛んできて打つでしょう。名選手になると、そのときボールが止まって縫い目が見える。いったいどういうことか? それはボウルと同じ早さで目の玉が動いたからです。目玉の動きが悪いと、ボールは風のごとく見える……。(…)
以上で、皆さん、もうお分りと思います。つまり、感覚と運動は同時進行です。いってみれば“グル”になっている……。そうして、この両者の間にあって、絶えず往ったり、来たり“走り使い”するのが、神経系の本来の役目と思えばいい。文字通り「伝達」するだけです。この関係は、ちょうど天秤の左右の腕に、感覚系と運動系がぶら下り、その支点に伝達系すなわち脳と神経が位していると考えればいいわけです。p.87

ここから本日のテーマ「内臓の感受性」が「言葉の形成」と、切っても切れない間柄にあることがわかってまいります。それは、いいかえれば「心で感じること」と「ものを話すこと」の両者が、まさに双極の関係にあるということです。あの感覚と運動の同時進行の関係──すなわち内臓の感受性が高まった、それだけ言葉の形成も的確になる。逆にいえば、すぐれた言葉の形成は、豊かな内臓の感受性から生まれるというものです。p.146

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